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名古屋家庭裁判所 昭和44年(少)2589号 決定 1969年6月20日

本人 M・T

主文

本件を名古屋地方検察庁検察官に送致する。

理由

上記のものは、調査審判の結果満二〇歳以上であることが判明したので、少年法一九条第二項第二三条第三項によつて主文のとおり決定する。

一、罪となるべき事実

司法警察員作成の送致書記載の犯罪事実に同じ。

二、上記事実に適用すべき罰条

司法警察員作成の送致書記載の罰条に同じ。

(裁判官 川瀬勝一)

司法警察員作成の送致書記載の犯罪事実

罪となるべき事実

M・Tは韓国籍を有する外国人であるが、日本に不法入国をすることを企て、有効な旅券または乗員手帳を所持しないで、昭和四四年五月一一日韓国馬山港において、パナマ国籍貨物船第2○慶号(九九七・九トン)にひそかに乗船、同船船首アンカー倉庫内等に潜入し、同日午後五時ころ同港を出港して、同年五月○○日午前一一時ころ名古屋区東築地町○○番地名古屋港片壁○○番に接岸し、以て本邦に入つたものである。

以上

参考

鑑定書

昭和四四年六月五日名古屋家庭裁判所裁判官川瀬勝一氏は左記事項の鑑定を私に命令せられた。

鑑定事項

一、本籍 韓国清州北郡○○南○○××番地

住所 同右(名古屋少年鑑別所在鑑中)

氏名 M・T

上記の者は昭和四四年六月六日現在満二〇歳未満であるかどうか。

以上

依つて私は同日午前一〇時二〇分名古屋家庭裁判所法廷において宣誓したのち、午前一一時より名古屋少年鑑別所医務室においてM・TのX線写真を撮影し、又歯等の検査を行ない、その結果に基づいて、この鑑定書を作成した。

鑑定経過

一、身体の一般状況

発育、栄養共に成人として中等度である。ひげも黒色で中等度に発生し、又腋毛も黒色で中等度に発生している。

二、歯の検査

歯は左右中切歯の間および右上中切歯の間に金をもつて補綴せられ、右上側切歯は金冠である。

智歯(第三大臼歯)は四本共発生している。

側切歯の切端や第一小臼歯咬合面などはエナメル質に咬耗がある。

智歯は一六年以後に発生し、男子のその所有数と年齢との関係は次の如くである。

年齢     智歯所有数

一九~二〇年 一本

二一~二二年 二本

二五年以上  二、七本

この成績からするとM・Tは二五年以上と推定させられる。

又咬耗度と年齢は次の如く推定せられる。

咬耗度                年齢

マルチン   天野十郎

1 咬耗のないもの         二〇年以下  一五~二〇年

2 エナメル質にのみ止まるもの   二〇~三〇年 二一~三〇年

3 ゾウゲ質の一部が露出するもの  三〇~四〇年 三一~四〇年

4 ゾウゲ質全面が現われているもの 五〇年    四一~五〇年

5 咬耗が歯頸に及ぶもの      七〇年    五一年以上

M・Tの歯はエナメル質に咬耗があり、この所見から年齢は二一~三〇年と推定される。

三、骨のレントゲン像検査

レントゲン像による骨端核の融合の状態は次の如くである。(添付第一表、第二表参照)

骨名      融合の有無 融合の時期

1 腸骨稜骨端核     完了  二一~二五年

2 坐骨結節骨端核    完了  二〇年

3 大腿骨近位骨端骨核  完了  一七~二一年

4 大腿骨大転子骨核   完了  一八~二〇年

5 大腿骨遠位置端骨核  完了  一八~二三年

6 脛骨近位骨端核    完了  一九~二四年

7 腓骨小頭骨核     完了  二〇~二五年

8 踵骨結節骨起     完了  一四~一八年

9 中足骨端核      完了  一七~二二年

10 肩胛下角骨端核   完了  一八~二二年

11 肩胛骨脊椎縁骨端核 完了  一九~二二年

12 上腕骨頭骨核    完了  一九~二〇年

13 橈骨遠位骨端核   完了  一九年

14 尺骨遠位骨端    完了  一九年

15 中手骨骨端核    完了  一六年

以上の所見からするとM・Tは骨年齢からすると二〇年以上を推定せられ骨端核のレントゲン像からすれば、二三~二五年以上と推定せられる所見を示している。

四、総合推定

歯、骨の状況からM・Tは昭和四四年六月六日現在年齢満二〇年を越えていると推定せられ、二三~二五年以上の年齢と推定せられる。

鑑定

一、M・Tは昭和四四年六月六日現在二〇年未満ではないと認められる。

この鑑定は昭和四四年六月五日着手同年同月十六日終了した 以上

昭和四四年六月十六日

名古屋大学医部法医学教室

鑑定人医師 古田莞爾

(第一、二表省略)

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